デジタル時代の漢字指導、「とめ・はね・はらい」にこだわりすぎなくてもいい?

漢字を教えるとき、「とめ・はね・はらい」を細かく指導する場面があります。
「この部分は『とめ』にしないといけない」
「ここはしっかり『はね』て」
こうした指導、皆さんも経験があるのではないでしょうか?

もちろん、字形を整えることは大切です。
しかし、「とめ・はね・はらい」を厳密に守らないとダメなのか?というと、必ずしもそうではありません。

実は、文部科学省の指針でも、細かい違いにこだわりすぎなくてよいとされています。

▼参考:文化庁『国語施策の紹介「常用漢字表の字体・字形に関する指針」』

【漢字の「字体」と「字形」の違い】
そもそも、「字体」と「字形」の違いをご存じでしょうか?

字体 → 漢字の基本的な形や構造(「木」「本」「学」のような形そのもの)
字形 → 書き方の細かい違い(とめる、はねる、角度など)

「字体」が崩れてしまうと別の字になりますが、「字形」の違いは、多少のばらつきがあっても問題にはなりません。

たとえば、「しんにょう」の最後の点が「とめ」か「はね」か、「木」の縦線がまっすぐか少しそっているか、こうした違いは字体が崩れない限り誤りとはされません。

【「書き方のクセ」まで直す必要はある?】
子どもたちの中には、筆圧が弱かったり、書くスピードが速すぎたりして、きれいに「はね」られない子もいます。
また、教科書やドリルに載っている字と、普段の自分の書き方が少し違うこともあります。

こうした「クセ」を細かく直そうとすると、かえって書くことが嫌になってしまう子もいます。
本来、漢字を学ぶ目的は「正しく読み書きできること」。
多少の書き方の違いを気にしすぎるよりも、文字を覚えて書くことの楽しさを伝えるほうが大切ではないでしょうか。

【デジタル時代の漢字指導】
現代は、手書きよりもパソコンやスマホで文字を打つことが多い時代です。
そのため、「とめ・はね・はらい」を厳密に指導することよりも、読みやすい字を書くことや、漢字の意味をしっかり理解することのほうが重要になってきています。

また、デジタル教材やフォントによっても、同じ漢字の形が少しずつ異なります。
例えば、「教科書体」と「ゴシック体」では、同じ漢字でも細かい違いがあることに気づくはずです。

こうした背景を考えると、「教科書に載っている字とちょっと違う!」と細かく指摘するよりも、
「この字、ちゃんと読めるね」「この字、意味は理解できているね」
といった声かけのほうが、子どもたちにとって学びやすい指導になるかもしれません。

【「正しい字を書くこと」は大切。でも、こだわりすぎなくてもいい】
もちろん、字を正しく書くことは大切です。
ただし、それが「細かい書き方の違いまで厳密に指導しなければならない」ということではありません。

漢字の学習は、最終的に「読める・書ける・意味がわかる」ことが目標です。
「とめ・はね・はらい」にこだわりすぎるよりも、子どもたちが楽しく漢字を学べる環境を整えることを意識してみてもよいのかもしれません。

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