「衣替え」って、いつから始まった?学校文化に息づく日本のならわし

6月1日。
多くの学校ではこの日から制服が夏服に変わります。
あたり前のように行われている「衣替え」ですが、そもそもこれは、なんのために、どうして行われているのでしょうか?
今回は、日本の学校文化の一つ「衣替え」について、歴史から今の実態まで、少し深く掘り下げてみます。
【衣替えの歴史は千年単位!】
日本の衣替えのルーツは、平安時代にさかのぼります。
当時の宮中では「更衣(こうい)」と呼ばれ、衣服を夏用・冬用に替える制度がすでに存在していました。
この「更衣」という言葉、実は「衣を更(あらた)める」と書いて、衣替えの語源でもあります。
もともとは貴族たちが季節に応じて装束を替える儀式のようなもので、年中行事の一つとして定着していきました。
その後、江戸時代には武士や町人の間でも衣替えの習慣が広まり、幕府の公式行事にも組み込まれるようになります。
当時は6月1日と10月1日に一斉に衣服を替える「御用改め」の日とされ、町中の人々が揃って夏物や冬物に切り替えていたといいます。
【学校での衣替えは明治から】
現在のように学校で衣替えが定着したのは、明治時代以降です。
軍隊や官僚制度の影響を受け、制服文化が一般化していく中で、衣替えもルールとして導入されました。
6月1日と10月1日という区切りは、江戸時代からの習慣がそのまま引き継がれたと考えられます。
季節の変わり目に合わせて衣類を切り替えるという文化が、形式として学校にも根づいたのです。
【「更衣室」の語源もここから】
「更衣(こうい)」という言葉は、衣替えだけでなく「更衣室」の語源にもなっています。
もともと更衣室とは、平安時代の宮中で衣服を着替えるための部屋のこと。
女性たちが装束を整える場所であり、単に服を着替える場所以上の意味を持っていました。
現代の学校やスポーツ施設の更衣室も、こうした文化的背景を持っていると知ると、ちょっと見方が変わってきます。
【最近の衣替え事情】
近年では気候の変動により、6月や10月でも真夏のような暑さ、真冬のような寒さを感じる日も増えています。
そのため、制服の切り替えを一律ではなく「移行期間」を設ける学校も増えてきました。
また、そもそも制服がない学校や、通年でポロシャツを採用する学校など、スタイルも多様化しています。
それでも、衣替えという区切りは、季節のリズムを子どもたちに意識させる良い機会になっています。
【子どもに伝えたい豆知識】
衣替えは単なる服装の変更ではありません。
季節の変化を感じる感性、自然のリズムに寄り添う習慣、そして日常の中にある「けじめ」や「行事」の大切さを学ぶ場でもあります。
服を替えることは、気持ちを切り替えることにもつながります。
「夏が来るんだな」「新しい季節が始まるな」と、子どもたちに伝えていけたら素敵ですね。