【大掃除の由来】日本と世界に共通する「節目の掃除」

年末の大きな行事の一つに大掃除があります。
「片付けをする日」というより、元は一年の区切りをつけるための行事でした。
【日本の大掃除は煤払い】
大掃除の直接のルーツは「煤払い(すすはらい)」です。
今のような家庭の大掃除の形は、もともと正月準備の一部として始まりました。
煤払いは、家の中の煤やほこりを落として清める行事です。
この「清め」が大事なポイントです。
単に汚れを落とすのではなく、
新年を迎えるために場を整えるという意味を持っていました。 
【12月13日という日付の意味】
江戸時代、12月13日は「正月事始め」とされました。
江戸城でもこの日に煤払いが行われ、町人の暮らしにも一気に広がります。
なぜ13日かというと、
旧暦12月13日が縁起の良い日と考えられていたこと。
そして正月までに準備を間に合わせるため、ここを起点にしたこと。
こうした理由が重なって、
「年末準備のスタートの日」として定着されました。 
つまり昔の感覚では、
大掃除は大晦日前の追い込みではなく、
正月へ向けた最初の節目だったわけです。
【年神様を迎えるための清め】
正月は年神様(としがみさま)を家に迎える行事です。
昔の人は『きれいに整った家に年神様が来て、福を授けてくれる』と考えていました。
だからこそ煤払いをして一年の汚れを落とし、家を清めたのです。
掃除と同時に神棚や仏壇を整える習慣があったのも、この発想とつながっています。 
大掃除は新年を迎えるための宗教的、文化的な準備という色合いが強かったと言えます。
【似た文化は海外にもある】
日本だけが特別というわけではありません。
「節目の前に家を徹底的に掃除する」文化は世界各地にあります。
目的は共通していて、古いものや悪いものを払い、新しい時間を気持ちよく迎えるという考え方です。
○中国の掃塵(そうじん)
中国では春節(旧正月)の前に「掃塵」という大掃除をします。
「塵を掃く」ことは、
古いものや不運を一掃して新年の福を迎える
という意味を持つとされています。
日本の煤払いと同じく、新しい年を迎える前のリセットとして行われています。
○イラン、ノウルーズ前のハーネ テカーニ
イランでは春分の頃に来る新年ノウルーズの前に
「ハーネ テカーニ(Khāne-tekānī)」と呼ばれる徹底掃除をします。
直訳すると「家を揺さぶるほどの掃除」。
カーペット洗い、壁の拭き上げ、庭や屋根裏の掃除など、家全体を整えます。
背景にはゾロアスター教由来の清浄さで悪いものを遠ざけ、新しい年を迎えるという考え方があるといわれています。 
○欧米のスプリングクリーニング
欧米では年末の大掃除は一般的ではない一方、春に行う「スプリングクリーニング」が広く知られています。
冬の間に閉じこもった暮らしの名残を落とし、新しい季節を迎えるために家を整える習慣です。
起源については複数の流れがあり、ユダヤ教の過越祭(パスオーバー)前に家を徹底的に清める伝統。
キリスト教の四旬節前に家を整える習慣。
寒い冬の煤や汚れを春に落とす生活上の必要。
こうした要素が重なって広まったと説明されています。 
日本の大掃除は煤払いに始まり、年神様を迎えるための清めの行事として育ってきました。 
中国やイラン、欧米にも節目の前に家を整える文化があります。
どれも古いものを払い、新しい時間を迎えるためのリセットという点でつながっています。 
大掃除は、片付けの作業である以上に、暮らしと気持ちの区切りをつける文化なんだと思うと興味深いです。
ぜひ、学校などで大掃除をする際に話題にしてもらえたらと思います。
うちも破けた障子を張り替えないと…です。
