ひきこもり相談の入口は、ただ「整理」すること

「相談したい」と思っても、最初の一歩がいちばん重い。
チーム絆などのひきこもり関連の相談で話を聞いていると、そう感じることがよくあります。

「こんなことで相談していいのかな」
「うちだけなんじゃないか」
「どこまで話したらいいんだろう」
頭の中でいくつも考えてしまって、電話番号を押す手が止まる。
いざ電話をかけても、最初の一言が出てこない。
そんな状態でつながる方も少なくありません。

相談の多くは、いきなり本人の話から始まりません。
まずは保護者の声からです。
電話での相談も多く、こちらが受話器を取った瞬間から、言葉が少し早口になっていたり、息を整えながら話し始めたりする方もいます。

「学校に行けていないんです」
「部屋から出てこなくて」
「このままでいいのか分からなくて」

話の中心にあるのは、問題の説明というより、迷いです。
何をしたらいいのか。
何をしたら悪化するのか。
正解が見えないまま、時間だけが過ぎていく。
そのしんどさが言葉ににじみます。

こういうとき、こちらが最初に意識しているのは、いきなり「外に出る」方向へ引っ張らないことです。
「まずは散歩に行きましょう」
「とにかく学校へ」
もちろん、それがうまくいくケースもあります。
ただ、相談に来る時点で、すでに家の中では何度も試して、うまくいかなかった経験が積み重なっていることが多い。

だから入口は、「外に出す」より先に、「言葉にする」ことから始めます。
状況を言語化する。
それがないと、次の一歩が「気合い」になってしまいます。

その言葉にする行為。
ある程度は細分化ができます。
例えば、次のようなものです。

・睡眠
夜眠れているか。
昼夜逆転が起きていないか。
起きる時間が一定か。

・食事
「一日何回食べられているか」。
水分が取れているか。

・家の中の動き
部屋から出られる時間帯はあるか。
トイレや風呂はどうか。

・会話の残り方
家族と話せる相手はいるか。
文字(メモ・LINE)なら反応があるか。

・きっかけ
いつ頃から変化が出たか。
直前にあった出来事(環境の変化・人間関係)。

・安全
自傷他害の心配はないか。
極端な希死念慮や暴力が疑われるサインはないか。

・家族の消耗度
保護者が眠れているか。
仕事や生活が回っているか。
限界ラインはどこか。

このあたりを確認すると、「何をすべきか」より先に、「どこからなら動かせそうか」が見えてきます。
例えば、夜が眠れていないなら、外出以前に睡眠の立て直しが先になります。
会話が切れているなら、まずは関係を残すやり方を探したほうがいい。
家族が限界なら、本人の支援と同時に、家族の支え方も組み立てないと家が持ちません。

もう一つ大きいのは、相談の奥にある願いです。
「出られるようにしたい」という言葉の裏には、別の言葉が隠れていることがあります。
「この先どうなるのかが怖い」
「ずっとこのままだったらと思うと眠れない」
「親がいなくなったらどうなるんだろう」
そういう切実さが背景にある。

だから、支援の最初のゴールは、劇的な変化ではありません。
例えば、朝に一回だけ声をかける時間を決める。
部屋の前で、短いメモを渡す。
本人と話せない日があっても、関係だけは切らない。
「できた」「できない」ではなく、関係を残しながら、生活を崩しすぎない形を探す。

動き出すきっかけは、気合ではなく、安心から生まれるということです。
本人が安心できる形。
家族が持ちこたえられる形。
その両方が揃って初めて、「次の一歩」が現実になります。

また、よく聞かれるのが「相談したいときは、どうしたらいいですか」という質問です。
結論から言うと、まとまっていなくても大丈夫です。
「何が困っているのかが、うまく言えない」
「どこから話せばいいか分からない」
その状態のままでも、相談は始められます。

電話でも、対面でも、まずは一度つながって、状況を言葉にしていくところから始まります。
相談の入口は、「解決策を持ってくること」ではなく、「今の状態を一緒に整理すること」だと思っています。
もし同じようなことで困っている方がいれば、タイミングのよい時にご連絡ください。

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