特別支援学校の教員になったばかりの頃。
私は授業づくりに悩んでいました。
一生懸命説明しても、なかなか子どもたちに伝わらない。
「どうすれば、もっと分かりやすく伝えられるのだろう」
そんなことを考えながら、毎日の授業に取り組んでいました。
あるとき、車椅子に乗っている方の気持ちについて考える授業をしました。
特別支援学校には、車椅子を利用している子どもが多くいます。
「車椅子を押すとき、どんなことに気をつけたらいいだろう?」
「押してもらう側は、どんな気持ちになるだろう?」
言葉で説明することはできます。
でも、実際に経験したことがなければ、想像するのは難しいかもしれません。
そこで、車椅子を使った体験活動を取り入れました。
子どもたち全員が、車椅子を押す側と乗る側の両方を体験しました。
すると、体験を終えた子どもたちから、こんな言葉が出てきました。
「速く押されたら怖かった」
「だから、自分が押すときはゆっくり押すようにした」
この言葉が、とても印象に残っています。
「ゆっくり押しましょう」と言葉で伝えることは簡単です。
でも、実際に乗って怖さを感じたことで、なぜゆっくり押す必要があるのか、自分自身で気づくことができたのです。
そして、その気づきが行動につながっていました。
この子どもたちの姿を見て、私は大切なことに気づきました。
「知っていること」と「体験して分かること」は違う。
同じ車椅子でも、押す側と乗る側では感じ方が違います。
自分とは違う立場を体験することで、それまで見えていなかったことに気づく。
そして、「相手はどう感じるだろう」と考えられるようになる。
もちろん、一度車椅子に乗ったからといって、普段から車椅子を利用している方の気持ちがすべて分かるわけではありません。
それでも、相手の立場を想像するきっかけにはなります。
この経験をきっかけに、私の授業づくりも少しずつ変わりました。
「どう説明すれば分かるだろう」から「どうすれば子どもたち自身が気づけるだろう」と考えるようになったのです。
この考え方は、今の支援でも大切にしています。
自分で触れる。
動かしてみる。
試してみる。
具体的な体験を通して、子どもたちに語りかけることを意識しています。
「百聞は一見にしかず」という言葉があります。
見るだけでは分からないことも、実際に体験することで気づけるものです。
あのときの子どもたちの「怖かったから、ゆっくり押すようにした」という言葉。
私にとっても、体験することの大切さを教えてくれた出来事でした。
これからも、子どもたちが自分で試し、感じ、考えられる機会を大切にしたいと思います。
今回の担当は「K・A」でした♫

