新しい自分

今回は私が支援した過去の事例をご紹介したいと思います。

私が支援の仕事を始めて2年目のことでした。
その頃に私がしていた仕事は、ひきこもり経験者や長期離職者の就労支援です。
「ゲンテン」という名の支援プログラムで、2か月半の間、週5日で事務所に通ってもらって内職作業をしてもらったり、座学という形でお話をするような支援でした。
例えるなら、就労継続支援B型事業所がしていることを、健常者の方に実施するという支援です。


1クール5名で受け入れていましたが、「ゲンテン」を始めて4クール目に30歳代の女性が参加されました。
短大を中退したあと、自宅でひきこもる生活を続けていた方で、他の支援機関からの紹介で受け入れました。
こういう言い方は失礼かもしれませんが、とても地味な女性で、初対面の時は少し身体を震わせながら、鼻の頭に汗を一杯かいて私の前にうつ向いて座っていました。
「無理にお話しする必要はないですから、出来る範囲で内職に取り組んでください」という形のスタートでした。
ただ、内職をさせてみると驚くほど器用で、精度も素晴らしいものでした。
私は彼女に「工場長」というニックネームを付けましたが、その時初めて恥ずかしそうな笑顔を見せてくれたことを覚えています。
参加中に3週に1回程度の個人面談も実施していました。
彼女は2回目の個人面談から、会話量が増え声も大きくなってきていました。
そして3回目の個人面談の時に、私を愕然とさせることを彼女が口にしたのです。

そのころ私は、「今までの自分を変えよう。みんなで次へ進もう。」という励ましの言葉を使っていました。
ところが彼女は個人面談でこう言ったのです。

「自分を変えようと言われると、今までの自分の全てが悪かったような気がしてしまいます」
「私は、ここで新しい自分を作り出して卒業したいと思います」

私は大きなショックを受けました。
励ますつもりで口にしていた言葉が、彼女を傷つけていたのです。
でも考えてみると、「彼女の言う通りだ」と納得もできました。
私は彼女に「人の心を大切にする」ということを教えてもらったのです。
それ以後の私は「変わる」という言葉を使わないように心がけ、「新しい自分で卒業してください」という表現に変えました。

彼女は「ゲンテン」を卒業後に就活を始めアルバイトで就労しました。
今、どのような生活をしているのかは分かりませんが、私は彼女に感謝しています。

「新しい自分」を作りだしていく努力は、誰にでも必要なことではないでしょうか?
言い方を変えれば「バージョンアップ」です。
子供たちにも同じことが言えると思います。
エデュワークで好きなことを見つけ、今まで気づいていなかった長所を知り、「新しい自分」を作り出し「バージョンアップ」していく。
それが社会に出ていく時の大きな力になると信じて、これからも支援を続けていきます。

今回担当「N」の経験談でした。

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