不登校・ひきこもりに必要なのは”きっかけ”だった。3年留年した私を変えた一人の先生との出会い

ひきこもりや不登校の状態から一歩踏み出し、社会とのつながりを取り戻していくためには、何が必要なのでしょうか。私は、その一つが「きっかけ」だと思っています。

大学生の頃にいわゆる「半引きこもり」状態だった私自身が、ある「きっかけ」によって今では放課後等デイサービスの責任者を任されるまでになりました。当時の自分からすれば、まったく想像できなかった未来です。

私は大学を3年留年しました。授業にはほとんど行かず、唯一外に出られていたのが大学から始めたアメフト部の活動の時でした。

普通なら大学3年生で行く教育実習にも行くことができず、ようやく参加できたのは大学生活6年目。4歳も年下の学生たちと一緒に教育実習に参加しました。周りから見れば、かなり遠回りをしていたと思います。

でも、その遠回りの先に、私の人生を大きく変える出会いがありました。教育実習で私の担当をしてくださったのが、現在エデュワークの代表を務める「越智先生」でした。

越智先生の授業は、私にとって目から鱗の連続でした。「こんな授業のやり方があるんだ」「こんなふうに子どもたちと関わることができるんだ」と、それまで自分が持っていた「先生」や「教育」のイメージがどんどん変わっていきました。

さらに驚いたのは、越智先生の活動が学校の中だけにとどまっていなかったことです。学校の先生として働きながらNPO法人を運営し、毎週の集まりにはさまざまな先生たちが集まっていました。模擬授業をしたり、イベントを企画したり、新しいことに挑戦したり。そこには、それまでの私が知らなかった世界がありました。

この人についていったら、もっといろいろな世界が見られそう。直感でそう感じ、教育実習が終わってからも、越智先生の授業を見に行き、NPOの集まりにも毎週のように顔を出しました。とにかく越智先生について回りました。

そんなある日、越智先生が学校の先生を辞め、放課後等デイサービスを立ち上げることになりました。そして、まだ学生だった私に「卒業してうちで働かない?」と声をかけてくれました。

大学を3年も留年している自分。授業にもまともに行けなかった自分。そんな自分を「必要だ」と言ってくれる人がいる。しかも、自分に新しい世界を見せ、成長するきっかけを与えてくれた人です。

迷いはありませんでした。「一緒に働かせてください!」と即決しました。

卒業後の目標ができたことで、そこから私の生活は大きく変わりました。毎朝大学へ通うようになり、空いている時間には小学校の非常勤講師として働きました。それまでの家にこもってゲームばかりしていた昼夜逆転生活が180度変わりました。

もちろん、急に自分自身が別人になったわけではありません。「頑張れ」と言われたから変われたわけでもありません。「この人についていきたい」「この場所でもっと成長したい」「自分を必要としてくれている人の期待に応えたい」。そう思える「きっかけ」があったことが大きかったのだと思います。

そんな越智先生が立ち上げたエデュワークも、5年目に入りました。エデュワークには、どんどん新しいことに挑戦できる環境があります。素晴らしい経歴や資格、専門性を持った職員も増え、子どもたちをサポートする体制も少しずつ充実してきました。

そんな中で、私は時々思います。自分には立派な経歴があるわけではありません。むしろ「大学を3年留年した」という、できることなら隠したかった過去があります。以前の私にとって、この3年間は「負の遺産」でした。

学校に行けない。昼夜逆転してしまう。ゲームばかりしてしまう。「このままじゃダメだ」と自分でも分かっているのに、動くことができない。そんな苦しさを、私は自分自身の経験として知っています。

だからこそ、同じように苦しんでいる子どもたちの気持ちを、少しだけ想像することができます。「あの頃の自分だったら、どんな言葉をかけてほしかっただろう」「何があれば、一歩踏み出せただろう」。そう考えながら子どもたちと関われることは、今では私の一つの強みになっています。

大学を3年留年した事実は変わりません。半引きこもりのような生活をしていた過去も消えません。でも、その経験の「意味」は変えることができます。

私にとって、そのきっかけをくれたのが越智先生でした。たった一人との出会いから、外に出る理由ができました。大学に行く理由ができました。働く理由ができました。そして今度は、私が子どもたちの「きっかけ」をつくる側になっています。

学校に行けずにいる子に対して、「頑張れ」「このままじゃダメだ」「早く学校や社会に戻らないと」と言うだけでは、人はなかなか動けないのかもしれません。

その人自身が「この人と一緒ならやってみたい」「ここなら行ってみたい」「こんなことをやってみたい」と思える何かに出会うこと。そんな小さな「きっかけ」が、その人の人生を大きく動かすことがあります。少なくとも、私はそうでした。

かつて「負の遺産」だと思っていた3年間も、今では子どもたちと向き合うための大切な経験になっています。だからエデュワークで働く今、私も子どもたちにとっての「きっかけ」を一つでも多くつくれる人でありたいと思っています。

宇治指導員:Y

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